《管理人の独り言》
今回は“若手士業シリーズ”第一弾といたしまして『働き方改革について』社労士の大槻智之先生にお話をしていただきました。
1時間という、いつもよりも短い講話時間の中で、“テンポ良く・分かりやすく・面白く”
皆さま興味津々の話題でお話をしてくださいました(^^)
働き方改革の最大の狙いは『長時間労働の是正&生産性の向上』
“長時間労働”については世間でもかなり話題になっておりますが、経営者の方を中心に開催されるこのAT-1では、経営者さんの生の声を聞くことができ業界特有の課題について知ることが出来ました。
アンケートには同業者の方の抱えるお悩みや、課題点、そして工夫していることについて知ることが出来て良かったというお声も多くありました。
今回に限らず、全4回の士業シリーズでは具体的な事例の共有が出来る場として多くの方に参加していただきたいと改めて感じました。
《管理人Memo》
『働き方改革』
日本政府が進めている働き方改革。“一億総活躍社会”の実現に向けて、最も大きな課題・挑戦となっている。
これまで、経済成長に“労働法制”を入れてくることはなかった。それほど重要視しているということが分かる。
■働き方改革9の柱(以下、会議順)
1.テレワーク、副業、兼業など柔軟な働き方
→複数個所での労働により、労働時間の管理や労災の問題など周辺の法整備が課題となってくる。
2.働き方に中立的な社会保障制度・税制など、女性、若者が活躍しやすい環境整備。
→例:配偶者控除など
3.病気の治療、子育て・介護と仕事の両立。
→例:育児休業法の改正など
4.雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、格差を固定化させない教育、労働者の人材育成の充実
→新卒よりも中途採用を増やしていこう。ベテランにも教育する仕組みを作っていこう。
5.賃金引上げ
6.同一労働同一賃金などの非正規雇用の処遇改善
7.時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
8.高齢者の仕事促進
9.外国人材の受け入れ問題
■働き方改革の最大の狙い
“長時間労働の是正”&“生産性の向上”
■長時間労働の原因
・「残業を見込んだ人員配置」と「リストラ」
日本の経営スタイルとしてスタンダード。そもそも日本企業は所定労働時間内で終わらせられるような人員配置をしていない。“みんなで助け合ってカバーしていこう”という日本人特有の考え方。ここには“解雇規制”が関係している。忙しいときに多く雇用して、落ち着いたらレイオフ(一時的に解雇)ということが出来ないので少数精鋭で頑張るスタイルが根付いてしまっている。そのような状況の中で“リストラ”を行い、ますます働き手が少なくなり、残った人に業務が集中していったことが長時間労働の大きな原因である。
・「パソコンや携帯電話の登場」
メールや電話の対応にスピード感が求められ、レスポンスが遅いなどの苦情にも繋がるので対応に追われるようになった。
・「成果主義の導入」
経営的な戦略は経営者にゆだねられていたものを、労働者に押し付ける傾向に。ノルマの達成のために長時間労働せざるを得ない状況。
■同一労働同一賃金とは
“同一の職務に対しては、同一の賃金を支払う”ということ。日本の企業は“職能給”といわれる給与体系で「能力に応じて賃金を決めますよ」と言っているところがほとんどで、同一労働同一賃金で給与を支払っている企業はほとんど無いのが現状である。職能給は能力主義とも言われているが、典型的な“年功序列賃金”のことであり、この給与体系をひっくり返そうとしているのが同一労働同一賃金である。
〈なぜ同一労働同一賃金が必要なのか〉
「正規社員」と「非正規社員」の賃金格差を埋めなくてはいけないという課題があるから。平成26年厚労省のデータによると、賃金格差は正社員を100%とした場合、非正規社員は6割を切っている。他国と比較しても割合が低い。
〈非正規労働者の変化〉
平成不況後に家計補助型から生計維持型へ変化していった。大黒柱(正社員)を支えるという時代から、大黒柱さえも非正規というケースが増え、正規社員の6割程度の収入で生活する人が出てきた。非正規社員は正社員のサポートという位置づけだったものが、人員調整により正社員の数が減ってくると、その分の仕事を非正規社員にも任せるようになった。職務内容は高度化していく一方で、給与はそのままという現状が起こっている。
⇒職務内容が高度化している時代背景に合わせて、同一労働同一賃金を行い賃金格差を縮めていこうという目的で取り組みはスタートした。
〈日本と外国の大きな違い〉
世界的には同一労働同一賃金と言えば“職務給”のことである。仕事内容をどういう仕事なのかということを必ず細かく分析し、職務評価書を作成する。勤続年数は関係ない、職種によって大枠の給与額が決まっている。企業単位ではなくその国の業界で職種により金額の大枠が定められているので、大企業だから給与が高いという訳ではない。
〈日本に導入した場合の課題点〉
・「原資の確保」
→非正規社員の給与を上げるために、どこからかお金を借りる?高い給与を支払っている正社員をリストラする??
・「ジョブローテーション(部署異動)」
→職務で給与が決まってくると、社内で違う職務の部署へ異動させることが出来なくなる。異動の度に、給与が変動することになる。
・「分析と評価」
→自力では難しいので、資金投入して外部に依頼することになる可能性が高い。
〈ガイドライン〉
職務給という点には触れず、とにかく賃金格差を無くしたい!ということを重点に置き作られたガイドライン。
【NG】正社員が職業経験はあるけれど、今の業務に関係ない。
→部署異動により職務が変わった場合、これまでの社歴・経験は関係ないのでその部署で働く人の賃金に近づけるようにしなければならない。
【OK】正社員には職務内容、配置の変更範囲がある。
→正社員には職種変更や転勤のリスクがあるので、その場合には非正規との給与水準に差があっても良い。
【OK】非正規社員とは役職の内容が違う、責任の範囲が違う。
→その場合には給与水準に差があっても良い。
⇒現時点では、ガイドラインはあるものの、はっきりとしたものではない。
〈企業の対策〉
同一労働同一賃金の導入に向けて、企業はどのようにしたら良いのか?正社員と非正規社員のどこに“違い”や“差”があるのか、一つでも多く見つけておく。仕事内容の差を細かく洗っておく、与える責任の度合いでも良い。
《セミナー・懇親会風景》
《参加者みなさまのご感想》
・同じ運送業の方が居てくださったので、聞きたいことを全て聞けてとても参考になり、ありがたかったです。じっくり質問を聞いてくれる時間がある勉強会はとても貴重だと感じました。
・働き方について経営者が思い悩んでいる部分に触れていただき、整理するポイントを教えていただきました。様々な業種の具体的な悩みから解説されることがとても良かったです。
・レジュメの作り方がすごくおもしろくて参考になりました。経営者の方の生の声が聞けて、非常に良かったです。
※たくさんの中のほんの一部になりますが、いただいた感想を掲載させていただきました。本当にありがとうございました。
《古賀Facebookより》
【第23回御礼】
本日は第23回目のAT-1でした。
講師には大槻経営労務管理事務所の大槻代表にお越しいただき、「同一労働同一賃金なんて本当に可能なのか?」と題して、今話題の"長時間労働"の話も交えながらお話しいただきました。
同一労働同一賃金の考え方は、突き詰めていけば職務給制度とニアリーイコールである。
ちなみにもう一方の職能給制度は、年功序列的な意味合いを色濃く持つ。
この職務給制度は現時点の日本においては全く現実的でない反面、国側は正規雇用を増やしたいが故に正規、非正規の垣根を低くしようとしてきており、そういう意味では非正規社員の待遇改善は必須となってくる。
ただ、この(追加の)原資をどこから持ってくるのかと言えば自ずと既存の正規社員の人件費を抑制せざるを得ず、これは体力のない中小企業にとってはなかなか頭の痛い問題である。
などなど、経営者さんにとって避けては通れない重要な課題について、いろいろと教えていただきました。
また、本日は大槻先生の話がとてもコンパクトにまとまっていた為、後半の対談&質疑応答にたっぷりと時間を割くことができました。
その中で、他社(他の経営者)の質問や悩みを聞きながらそれぞれが自社の問題に置き換えて考え、とても深い学びを得ていただいたように感じます。
質問の時間のはずなのに、多くの方が"自社のお悩み相談タイム(笑)"になっていたことも、先生や参加者の皆様への信頼あってこそだと感じました。
図らずも、AT-1の真骨頂であるこの「全員参加型の寺子屋」の形が実現でき、参加者の皆様からとても好評をいただけたことも、本日の大きな収穫でした。
改めまして、講師である大槻先生ならびに大槻事務所の社労士の皆様、そしてご参加くださいました皆様、本日はお忙しい中に誠にありがとうございました。
今回から全4回の「アラフォー士業シリーズ」は、建て付け上はシリーズモノではありますが、それぞれに関連性はなく、単体で受講いただいてもどれも大変為になるコンテンツ間違いなしなので、来月以降も多くの方のご参加を心よりお待ち申し上げております!!
ANNOUNCEMENT
古賀Facebookより
【第23回AT-1告知】
エンジェル寺子屋一番館(AT-1)、第23回の募集を開始します!
士業のシリーズ物(全4回)の第一弾である次回は2月13日(月)で、講師には大槻智之先生にお越しいただきます!
2月〜5月の4回は『アラフォー士業シリーズ』ということで、今の時代をリードする若手の士業の方々にご登壇いただきます!
社労士、会計士、弁護士、税理士と続くのですが、まずトップバッターは大槻経営労務管理事務所代表の大槻先生です。
大槻先生の事務所は、給与計算代行等の業務を行わず、顧問やコンサルでの仕事をメインとしている社労士事務所としては、日本最大級の事務所です。それなのに当の大槻先生は、少しも傲らず誰にでもフランクに接してくださるとっても素敵で魅力的な方です。
他方、日本の社労士としていち早くシンガポールにも進出され、今後のアジアにおいて"sharo-shi(綴り不明)"の認知度を上げていくための活動にも力を入れられています。
今回はそんな大槻先生に「同一労働同一賃金なんて本当に可能なのか?」と題して、昨今巷で話題のテーマについて深く切り込んでいただく予定です。
さて、今回からの士業シリーズですが、ご参加いただける経営者さんには、ぜひご自身の会社の顧問の先生をお連れいただければと思っております。
経営者を支える士業の方は、顧問先の社長と共に成長していくのが理想だと私は考えており、逆に社長の成長スピードについて行けないような先生であれば、早急に変更を検討すべきだと思っています。
そういう意味では、今回の"先生同伴"の試みは「試金石」と「学び、成長の機会」という両面からうまく使ってもらえるのではないかと勝手に感じております。